積立を始めてしばらくすると、必ず一度は思うんですよね。「これ、みんなちゃんと増えてるの?」って。SNSを開けば増えた報告ばかり流れてくるけど、あれは増えた人が投稿してるだけで、減った人は黙ってるだけかもしれない。じゃあ本当のところ、投資信託を持ってる人の何割が利益が出てるんだろう。

その答えに近い数字が、実はちゃんと公表されています。金融庁が集計している「共通KPI」という指標です。今回はそれを、盛らずに、そのまま読みます。

この記事でわかること

・投資信託で利益が出ている人の割合(公表データ)
・その割合が前の年より下がった理由
・「共通KPI」という数字の正体と、どこで見られるか
・この数字を推し活世代がどう受け止めればいいか

「共通KPI」って、そもそも何の数字?

いきなり出てきた共通KPIという言葉。名前はかたいけど、中身はシンプルです。銀行や証券会社を横並びで比べられるように、共通の定義で作られた指標のこと。会社ごとにバラバラの基準で「うちのお客さまは満足しています」と言われても比べようがないので、同じものさしを用意しましょう、という発想です。

共通KPIは3つの指標で構成されています。

  1. 運用損益別の顧客比率(=どれくらいの人が、いくら増えた/減ったか)
  2. 預り残高上位20銘柄のコスト・リターン
  3. 同じく上位20銘柄のリスク・リターン

今回わたしたちが知りたい「何割の人が利益が出てるの?」は、この1つめにあたります。推し活でたとえるなら、それぞれのファンクラブが勝手に「満足度100%です」と言うんじゃなくて、同じアンケート用紙で全ファンクラブに聞いた結果、みたいなもの。だから比べる意味があるんです。

利益が出ている人は、全体の約7割

本題です。金融庁が2025年9月10日に公表した「投資信託の共通KPIに関する分析(2025年3月末基準)」によると、運用損益がプラスの顧客割合は、全事業者平均で71.8%でした。これは公表・報告した247者の単純平均です。

ざっくり言えば、10人いたら7人は含み益、3人は含み損。この数字を最初に見たとき、わたしは正直ちょっとほっとしました。全員が増えてるわけでもないし、逆に大半が損してるわけでもない。SNSで見る景色より、ずっと地味で現実的な数字だなと思ったんです。

業態ごとに見ると、少しばらつきがあります。

業態運用損益がプラスの顧客割合
主要行等77.8%
地域銀行72.6%
協同組織金融機関等67.6%
証券会社69.8%
投資運用業者82.4%
その他77.1%

※ 金融庁「投資信託の共通KPIに関する分析(2025年3月末基準)」2025年9月10日公表。数値は基準日時点のものです。

いちばん高いところと低いところで15ポイントくらい差があります。ただ、これは「この業態を選べば増える」という話ではありません。扱っている商品の種類や、お客さんがいつ買ったかによっても変わる数字だからです。

去年は約9割だった。この差をどう受け止める?

ここがいちばん大事なところかもしれません。同じ調査の2024年3月末基準では、プラスの顧客割合は91.7%(240者)でした。つまり約9割から約7割へ、1年で20ポイント近く下がっています。

大事な注意点:この割合は「基準日時点」の数字

共通KPIの運用損益別顧客比率は、決まった基準日時点での評価額と購入額を比べたものです。だから相場が上がっている時期に集計すればプラスの人が増え、下がっている時期に集計すれば減ります。9割から7割になったのは、金融機関の質が急に落ちたからではなく、市場環境が変わったから、という読み方が自然です。この数字だけで「投資が不利になった」と判断するのは早すぎます。

逆に言うと、9割という数字のほうも「投資すればほぼ増える」という意味ではなかった、ということ。たまたま集計した日の相場が良かった、という側面があります。数字は、切り取る日によって表情を変えます。

この数字から、わたしが受け取った3つのこと

1. 増える前提で考えない

約3割の人は、基準日時点でマイナスでした。これは特別に運が悪い人たちではなくて、単に「その日の値段がそうだった」というだけ。自分がその3割に入る日は、続けていれば普通にやってきます。そのときに慌てて売らなくていい生活設計のほうが、商品選びより先に大事だと思っています。

2. 「みんな増えてる」は、SNSが作った景色

タイムラインに流れてくるのは、増えた人のスクショです。減った人はわざわざ投稿しません。実際の数字は7割で、しかもその割合は年によって大きく動く。ここを知っておくだけで、他人の投稿と自分の口座を見比べて落ち込む回数がぐっと減ります。推し活と同じで、他人の課金額と自分を比べても幸せになれないのと一緒です。

3. 販売会社を選ぶときの「見る場所」が一つ増えた

共通KPIは金融事業者ごとに公表されています。つまり、口座を開こうとしている会社の数字を自分で見に行けるということ。広告のうたい文句ではなく、同じものさしで測られた数字を見る。これは推し活でいう「公式発表を一次情報で確認する」のと同じ作業で、わたしたちが得意なやつです。

わたしが「やらなかったこと」

まず、この数字を見て積立額を変えること。71.8%という数字は、わたしの積立が正しいかどうかを教えてくれるものではありません。相場の写真を1枚見ただけで、毎月の設定を触るのは違うなと思いました。

もう一つは、業態別の表でいちばん高いところに口座を移そうとすること。82.4%という数字は魅力的に見えるけど、そこに集まっている人がどんな商品をいつ買ったかまではわからない。数字の裏側を説明できないうちは動かない、と決めています。インデックス投資の考え方を一度整理したときにも同じ結論になりました。

よくある質問(この数字のギモン)

Q1. 約3割の人は、損しちゃったってこと?

基準日の時点で運用損益がマイナスだった、という意味です。売って損が確定したわけではなく、その日の評価額が買った金額を下回っている状態も含みます。持ち続けていれば、その後プラスに戻ることもあります。

Q2. この数字はどこで見られるの?

金融庁のサイトで分析資料が公表されています。記事末の出典リンクから見られます。各金融事業者も自社の共通KPIを公表しているので、気になる証券会社の名前と「共通KPI」で調べると出てきます。

Q3. 割合が高い会社を選べば増えますか?

そうとは限りません。この割合は、その会社のお客さんが何をいつ買ったかにも左右されます。将来の成果を約束する数字ではないので、商品のコストや自分の続けやすさとあわせて見るのがおすすめです。

Q4. 推し活しながら少額でも、この数字は関係ある?

関係あります。金額の大小に関わらず、値動きの影響は同じように受けます。むしろ少額から始めている人ほど、この「7割と3割」を先に知っておくと、最初の含み損で驚かずにすみます。

投資の話って、増えた話ばかりが目立ちます。でも実際に公表されている数字は、7割と3割。しかもその割合は、集計した日の相場でぐらぐら動く。この地味さを先に知っておくのが、続けるうえでいちばんの防具になると思っています。

推しへの課金は、リターンを計算しないから幸せでいられる。育てるお金のほうは、リターンが読めないことを最初から知っておくから続けられる。同じお金でも、付き合い方は分けていい。わたしはそう思ってやっています。

参考にした一次情報

  • 金融庁「投資信託の共通KPIに関する分析<2025年3月末基準>」(2025年9月10日公表) https://www.fsa.go.jp/news/r7/kokyakuhoni/20250910/kpi_toushin_20250910.pdf
  • 金融庁「NISA特設ウェブサイト」 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/

※ 数値は基準日時点のもので、その後の市場環境により変動します。最新かつ正確な情報は金融庁および各金融機関の公式サイトでご確認ください。本記事は特定の金融商品の購入を勧誘するものではありません。